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004 田子の浦に  --- 山部赤人

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    田子の浦にうち出でて見れば白妙の 富士の高根に雪は降りつつ
    - 新古今和歌集 冬の部 -

    部立:冬

    2字きまり

    のうらにうちいでてみればしろたえの のたかねにゆきはふりつつ


    「田子の浦」静岡県の富士川河口付近から、沼津千本浜あたりまでの海岸、三保の松原とならんで、富士を見る美しい地帯。
    「うち出でて見れば」うちは語勢の強めるための言葉(接頭語)、出て見る。
    「白妙の」白妙は、山の枕詞、ここでは富士の枕詞。
    「富士の高根」高根は高い山、富士山。


    田子の浦に出て、北の方を見渡すと、高くそびえ立つ富士の山に、雪が真っ白に降っている---けだかく、美しい富士の景色を、そのまま詠んだ歌。


    この歌は「新古今和歌集」からとなっているが、万葉集にある原作では「田子の浦ゆうち出でて見れば真白にぞ富士の高嶺に雪は降りける」となっている。
    作者の山部赤人は、奈良朝時代の歌人で、柿本人麿とほとんど同時代の人、人麿よりも僅かあとまで生存したといわれる。人麿とならんで名を知られ、三十六歌仙の一人。
    赤人の歌は、自然の美しさを、絵画的に表現して、優美、清澄をもって知られる。その歌四首---
    「春の野にすみれ摘みにと来しわれぞ野をなつかしみひと夜ねにける」
    「明日よりは春菜つまんんとしめし野に昨日も今日も雪は降りつつ」
    「われも見つ人にも告げんなつかしの真間の手古名が奥津城どころ」
    「なつかしの真間の入江にうちなびく玉藻刈りけん古手名し思ほゆ」(真間は千葉県市川市にある)
     

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    003 足びきの   --- 柿本人麿

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      足びきの山鳥の尾のしだり尾の 長々し夜をひとりかも寝む
      - 拾遺和歌集 恋の部 -

      部立:恋

      2字きまり

      びきのやまどりのおのしだりおの なががしよをひとりかもねん


      「足びきの」山の枕詞。足引きの山の・・・。
      「しだり尾」長くたれさがった尾。
      足びきの山鳥の尾のしだり尾の・・・という上の句全部が下のながながし夜・・・という語の序詞。
      「長々し夜」長い長い夜。
      「ひろりかも寝む」かもは軽い疑いとやるせない嘆きの気持ちを含む助詞、ひとり寝るのかなの意。


      我が思う人は、待っても来ない。この長い長い秋の夜を、待ち焦がれてひとりで寝なければならないのか---恋するものの嘆きを歌ったもので、恋人の姿を追って、秋の夜長を待ちわびる懐かしく悲しい歌。


      作者 柿本人麿は、持統天皇、文武天皇両朝につかえた宮廷詩人といわれ、三十六歌仙の一人で、歌聖と仰がれている。万葉集を代表する歌人。
      行幸のお伴や、公私の用務で、各地を訪ねて、自然や風物を歌にした。
      奈良朝時代の和同十四年石見国で死んだという。臨終の時、大和の都にある妻を思い、自ら傷んだ歌に「かもやまの岩根しまける我をかも知らずて妹が待ちつつあらん」---
      人麿の死を聞いた時、その妻の読んだ歌も、旅にさびしく死んだ夫を思う悲しいもの。
      人麿の歌---
      「ひんがしの野にかぎろいのたつ見えてかえりみすれば月かたぶきぬ」
      「大地もとらば尽きめど世の中に尽き得ぬものは恋にぞありける」
      「久方の天照る月もかぐろいぬ何になぞえて妹を偲ばん」
       

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